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データ分析で酒造りしていると噂の獺祭の酒蔵見学に行ってきた

2017/06/24 ysdyt 1 Comment

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GWにはるばる山口県にある旭酒造の見学に行ってきたのでそのメモというか与太話です。長いですがご興味あればお付き合いください。

 

獺祭?旭酒造?

獺祭(だっさい)は日本酒のブランド名で、旭酒造(あさひしゅぞう)株式会社がその製造会社です。

旭酒蔵株式会社は、データ分析と、その知見を活かした作業工程のマニュアル化によって “獺祭”ブランドを成功させ1代で有名になった山口県の酒蔵。

データ活用によって杜氏の作業をマニュアル化し、作業者を増加・作業の機械化を推進することで、日本で唯一、冬だけではなく年中日本酒を仕込むことを可能にしました。
年中仕込むことにより、他の酒蔵よりも圧倒的な量のトライ&エラーを検証することができ、そのおかげで「ウマイ酒」を作り出しているそうです。

また、一般的な日本酒酒蔵が行っている、「(仕込み作業が発生する)冬だけ作業者を雇用する」労働形態ではなく、年間で労働契約を結ぶことで、作業者にとっては安定的な収入を得ることができ、酒蔵にとっては作業者確保の労力減少・技術の喪失防止ができるなど、日本酒業界の働き方やイメージを変えることも目指しているそうです。
一言で言うと、ビジョンと技術があるかっこよい会社。

 

きっかけ

TJO氏が旭酒造のことについて2014年10月に書かれたブログ記事を読んで痛く感銘を受けたのがきっかけです。

ブログの内容をざっくりまとめると、

  • 旭酒造は経営難で杜氏に逃げられたことをきっかけに、社長直々に素人(酒造り職人ではない一般社員)でもデータドリブンに日本酒作りができる仕組みを作り始めた。というか杜氏がいないのでそうするしかなかった。
    • 例えば、麹造りのステップでは蒸した米を温度センサー付きの作業台に載せて厳密に温度を測りながら作業を行う。(通常の酒蔵では常時蒸し米の温度を測定することはしないらしい)
    • データを大量にとって「杜氏の職人技を『再現する』」ことを目指している
    • この画像↓のように、”製麹(麹造り)”の工程では、どのくらいの高さからどのくらいのスピードでどのくらい麹をふりかけるか、みたいなことまでマニュアル化されている
    • そんな感じでデータドリブンに工程をマニュアル化しているため、入社一年目の社員でも酒造りに参加できる
  • ただし、データによって全てが再現できるとは思っていない。人間にしかわからないこともあるという基本姿勢
    • 「わからない領域がある、ということが理解できないと本質はわからない(著書より引用)」
      少数のリーダーとなる人が、「数字ではわからないことがある」ということをきちんと理解して、指導や判断をしないといけないという姿勢
    • その他大勢の人は基本的にはデータに沿って効率的に作業を行えば良い
    • データ分析で分かる限界を踏まえた上でデータ分析の結果に基づいて意思決定し、必要とあらばデータ分析の枠組み自体を変える決断をする人物が必要というアイデア

上記内容が「ほんまかいな」ということを確かめるために実際に行ってきた、という感じです。あと個人的な趣味として、地方の辺鄙な場所で都会に負けない凄いことをやっているのを見に行くのが好きなのです。

 

見学前準備

山口に行く前にこちらの本でも予習しておきました。旭酒造の桜井社長の著書です。獺祭ブランドを1代でここまで有名にしたご本人。現在は息子さんに社長のポジションを譲られています(本人はその後、会長職となられた模様)。

旭酒造の蔵見学は完全事前予約制でネットから申し込めます。見学料金は300円とお安いものの、午前午後に一回ずつ、それぞれ~8人ほどの少数グループになるので、もしも見学する場合は早めに予約する必要がありそうです。ちなみに自分が行ったGWシーズンは数ヶ月前からソッコーで埋まっていたものの、当日行ってみると参加者は4人でした。

ちなみに、旭酒造株式会社の会社規模ですが、ちょっと調べてみたところこんな感じだそうです。

<従業員数>
207名(2016年12月末 正社員:111名 パート社員:96名)。

<売上推移>
決算期      売上高      経常利益
———————————————————————–
2013年9月期  37億 600万円    4億9,200万円
2014年9月期  45億9,900万円   11億9,000万円
2015年9月期  65億3,700万円   21億1,900万円
2016年9月期  108億 300万円   41億6,700万円

「飛ぶ鳥を落とす」とはまさにこのこと。

 

旭酒造の所在地

旭酒造株式会社の所在地は山口県の東部です。山口県内には東京から利用できる空港が2箇所あり、山口宇部空港(西部)からだと旭酒造まで車で90分ほど、岩国錦帯橋空港(西部)からだと45分だそうです。それ以外の交通方法はこちら。(近くないけど)最寄りの新幹線の停車駅は新山口駅。
自分たちは宇部空港からレンタカーして向かいました。道の途中には日本三大天神の防府天満宮なんかもあります。

赤のピンが旭酒造株式会社。東京からは…まあ遠いです。

山道を運転していると、おもむろに12階建ての旭酒造株式会社のビルが登場します。会社が大きくなりすぎて、獺祭の製品フレーズである「山奥の小さな酒蔵」ではすでにないのだけは確か。

Post from RICOH THETA. – Spherical Image – RICOH THETA

 

蔵見学

蔵見学の前に、簡易スペース的なところに通されて「獺祭ができるまで」の作業プロセスが簡単に座学で紹介されます。
酒造りのプロセスは大きく「精米→洗米→蒸米→製麹→仕込→醗酵→上槽→瓶詰」の8工程だそうです。見学できるのはこの内の「洗米・蒸米・醗酵」という感じでした。

座学で配布されたパンフレット

なんと、この紹介時間の冒頭は「(二代目)社長」が直接あいさつに出てこられます。

2分ほどの社長挨拶の後は見学案内を担当する社員さんに引き継がれますが、「なんでも聞いてください!(社員が)なんでも答えますので!」と気さくでオープンな感じの社長さんはすごく好印象でした。
午前午後に一回づつ、たった2分ほどだとしてもこうして毎回社長が直接見学者の前に出てこられるのはすごいし嬉しい気持ちになります。

Post from RICOH THETA. – Spherical Image – RICOH THETA

蔵見学(というか、デカイので “工場見学” と言った方が正しい)は、見学者用専用ルートとかではなく、実際に社員さんが作業されているところをすぐ隣で見学するタイプでした。これがかなり面白い。

社員さんの邪魔にならない限りは近づいたり、なんでも写真を撮ったりしてもokとのこと。「そんなに自由でいいの?」とこちらがウロウロするのを遠慮するくらい自由な感じでした。

実際の作業場に入るので、白衣も着て、帽子も被って、ジェットエアーを浴びてホコリなどを落として、靴の底も洗ってから作業場に進みます。こんな工場見学楽しいだろ絶対(すでにニヤニヤしている図↓)。

 

精米現場

奥の二つのポッド上のものが洗米機。水がブシャーっと出てきて洗米される

精米された米は、米全体をしっかりと洗うために決まった少量(15kgずつ)で洗われます。大量の米を自動的に “ムラ無く均一にしっかり洗う”ことは実は意外に難しいそうで、きちんとやろうとすると少量の米を順番に洗うしかないそうです。

なので、洗米機械の物理的な台数を増やさない限りは作業量が上がりません。さらに機械化を進め無人化しようとしても、米の水分含有率を機械的にきちんと測定・管理できないという問題もあるそうで、機械化ができず、まだまだ手作業が多く残る工程だそうです。

作業者の方は常に水に触るし、水分を含んだ重い米を人力で運ぶのでかなり重労働のように見えました。

精米され洗われた米は新品のBB弾(例えが悪い…)のように白くて丸くてピカピカで綺麗

案内していただいた社員さんのお話では、洗米や製麹などの “前処理” 的な作業が味にクリティカルに効いてくるらしく、醗酵の工程こそが日本酒作りの最重要工程だと思っていた自分には驚きでした。

ちなみに獺祭の材料となる米は「山田錦」という酒造好適米が使われています。

山田錦は、米粒の中央にデンプンが集まるように品種改良された酒専用米らしく、もちろん炊いて食べこともできますが美味しくないそうです。
普段我々が常食している米はデンプンが米全体に分布しているので旨味を感じるらしく、中央に偏っていると味の感じ方が変わるそう。

それぞれの精米歩合で米の見え方がどのように違うのか説明していただいた

この山田錦を中央のデンプンだけが残るように米の表面を削り取ります(= 精米)

獺祭はこの “精米歩合” が業界最大値の77%、つまり米の2割ちょっとだけを材料として使い、大部分の77%は削り取ってしまいます(削り取った部分は捨てずに、煎餅にしたり他の商品に使われる。捨てない。)

一般に、米の中心のデンプン領域以外は日本酒の”雑味”に加担してしまうので、できるだけ精米歩合を高くしてデンプン領域の純度を上げるそうです。精米度が高い日本酒は “すっきりとした” 味わいになるとか。もちろん、削った分だけ酒の作成量は少なくなるので、そのへんはコストと利益と製酒理念とのご相談。

なぜ「77%」なのかというと、その精米歩合が最高の味だったからというわけではなく、77%が日本最高の精米歩合だったからということだそうです。味の追求だけではなく、ちゃんと話題作りポイントも押さえている。

一方で、日本酒原料の最高級米である山田錦は、その育成の手間と利益を天秤にかけるとあまり農家にとってはうまみが無い米らしく、近年は生産農家がどんどん減っているそうです。

そこで旭酒造では、山田錦の生産量を上げるため、ITを駆使した稲作をFujitsuと組んで自分たちでやりはじめました。(自著には、山田錦を組合から全然買い付けさせてもらえない嫌がらせにあったとも書いてあった。そういうのも理由だと思う)。
しかも獺祭の安定的原料獲得だけのためではなく、農業全体に貢献することが目的だそうです(現在は米の全量を旭酒造が買い上げている)。

このFujitsuのシステムは “Akisai(秋彩)” と呼ばれるもので、2014年8月からこの取り組みが行われており、社員さんに聞いてみたところ現在も引き続き頑張っているとか。

ちなみに、この話を聞いてたフロアではお掃除ロボットのルンバがせっせと掃除していました(食品を加工している部屋とは別の、ちょっとmtgするみたいな部屋)。こんな山奥にルンバがいるなんて…

「食品扱う会社なのでフロアは綺麗にしとかないといけないですが、やっぱり面倒なのでルンバに掃除してもらってます」とのこと。

どうしてそこまで効率化を進めるのか?

個人的に思うに、単純な生産性UPということに加えて、先代の桜井社長の “酒蔵での働き方のスタイルを変えたい” という想いにも由来しているのではないかと思います。

いろいろ機械化して効率上げて生産性上げて、日本酒を冬だけ仕込みをするのではなく一年中生産できるようにして、正社員としてきちんと年中安定した雇用形態を結んで安心して働いてもらえるようにしたい、と著書に書かれていました。

そうした時に、「ルンバで掃除」のように、機械でもある程度仕事がカバーできるのなら積極的に導入しようぜ、みたいな雰囲気というか思想なのかもしれません。

今回は旭酒造のIT的・ギーク的なところを見に来たので、「ルンバがいる」というちょっとしたことにもますます期待感が高まりました。

 

蒸米現場

旧蒸し器。蒸された米がコンベアで運ばれてき、コンベアの出口でボトボトっと落とされる。それを人間がヨイショと運ぶ

新蒸し器。パイプの中で米が蒸されて運ばれる。確かに早そうだし、天井に設置されているので場所もとらなそう。

蒸された米はベルトコンベアで運ばれて行きます(画像1枚目)。この辺もかなり人間作業が入る感じでした。

生産性upのために新しいラインも作られたそうで、画像2枚目のように、天井に伝うダクト状の中で蒸されながら米が運ばれているそうです。旧蒸し器と新蒸し器を同時に稼働させているそうで、1代で大きくなった会社なので同じフロア内でも新旧機器が入り乱れているといった様子でした。

ところで、獺祭のラベルにも書かれているかっこいい「獺祭」という文字(ロゴ?)は山口県出身の書家、山本一遊氏によるものだそうです。
これ↓

 

 

 

 

で、一方で社員さんが着ている制服チックな作業着の背中に書かれているキャラクターが気になります。
これ↓

 

 

 

 

 

 

 

こいつは動物の “カワウソ” がモチーフらしく、そもそも獺祭の “獺” という漢字は”カワウソ”と読みます。旭酒造の所在地が獺越(おそごえ)と呼ばれる地名で、この土地にはカワウソにまつわるおとぎ話があるそうです。獺祭という商品名は、地名から一文字取っているのですね。

で、このカワウソキャラクターは獺祭石鹸などの公式商品にも印刷されているのでもちろん公式キャラクターなんですが、それにしても”獺祭”のロゴのカッコよさとは印象が違いすぎて気になってしまう。そんなに可愛いわけでもn…

 

醗酵現場

発酵タンク。中央にぶら下がっているのが温度センサー

各タンクについてる水冷装置。タンク周囲に水を流すことでタンクの温度調節をする

日本酒を醗酵させるタンクの紹介。

この工程こそ、まさに無数のセンサーによってデータドリブンに発酵管理してるんだろう!と思いきや、使っているのは温度センサーのみ。(えっ)

アルコール度数(発酵状態)などはセンサーではなく、人間がサンプリングして個別に検査機器にかけて測定しているそうです。思ってたのと違う!!!

各タンクの温度管理も、部屋の空調と各タンクに設置された水冷装置だけで管理されています。それでも部屋の位置によっては空調の効き方が違うので、その場合は1枚目の画像にも映っている銀のシートをタンクに被せて温度変化を調節しているそうです。うん。けっこうアナログ。

ここぞとばかりに、「なぜセンサーでアルコール度なども管理しないの?」と質問してみたところ、わりとざっくりと「各タンクの様子を知るには人間しかわからないこともある」と返されました。うーん。

発酵は完全に化学反応なので、機械的に管理したほうがより厳密に各タンクの醗酵状態を管理できると思うんですが…。

しかし、全ての醗酵タンクに高精度なセンサーを設置すると設備費用の方が高くついてしまうということもありそう。獺祭がこのままさらに海外でも人気になり、人間が管理しきれないタンク数を超えるまでは人間が個別管理したほうがコスト的にも安い的な発想なのかもしれません。ちょっと納得できなかったですが、他の見学者の方もおられるのでこれ以上はつっこめませんでした。

で、この部屋で蔵見学は終わりです。(えっ)

 

 

その他もろもろの話

データ取得について

結局、「データドリブンに酒作りをしている」ところの片鱗は見れませんでしたorz 可能性は二つ

  • そんな製造の肝になるようなものを一般公開するわけないじゃん。バカなの?
  • 実はデータドリブンっぽくやってるのは麹を作る製麹工程と醗酵状態の分析だけで、他の工程はわりと従来の酒蔵通りアナログなの。

1つ目の可能性について。

旭酒造が他の酒蔵メーカーなどから視察見学を受ける際は、データも含め全公開しているそうです。「マネられたところで、もはや旭酒造に追いつくことは出来ない」というかなり強気な理由からだそう。

なので、単純に一般の酒蔵見学コースにそれらの見学が入っていないだけという感じっぽいです。データを扱っているであろう成分検査室も噂の温度センサー付き作業台も見ることができず残念。

2つ目の可能性について。

おそらく獺祭が「データ分析で作られる酒だ」と話題なのは、製麹工程(の作業台の温度センサー)と分析室で行われている内容を指しているようです。

見学後に見つけたこの記事も、麹造り工程でのデータ活用の話を中心にしているのでおそらくそんな感じ。

>象徴が検査室だ。酒造りの全行程で詳細なデータを取り、検査室のパソコンに蓄積して分析することで、酒造りの最適解を見つけ出してきた。日本酒は、米を麹で糖化させる工程などを経て「もろみ」にして、それを酵母で発酵させて造る。
>例えばもろみの発酵は、山なりの理想の発酵曲線(「BMD曲線」と呼び発酵日数と糖度などの関係を示す)に、可能な限り近づける必要がある。そのための微妙な温度管理や水の追加タイミングなどについてデータを活用して知見を積み上げた。

“酒造りの全行程で詳細なデータを取り” というフレーズから、センサーの類で膨大なデータを随時取っているのかと想像していましたが、どうやら多くはセンサー以外の(人間の手作業による)方法で醗酵周りのデータを取得している、という理解が正しそうです(そりゃそうか)。

それはそうだとしても、米を洗ったり蒸したり、それらを運搬したり、意外にアナログ作業が残っている箇所も多いという印象を受けました。

 

機械化の課題

例の「マニュアル化されている製麹工程」も、「どのくらいの高さからどのくらいのスピードでどのくらい麹をふりかけるか」まで決まっているのなら機械化できるのでは? と思っていました。

特に製麹は40°近い恒温室で作業者が汗をダラダラ流しながら、シフトをローテンションして徹夜で醗酵を管理し続ける重労働らしいので、まさにそういう工程こそ機械化すべきでしょうという質問をしてみたところ、この工程に関しては、「人間の作業を真似できるほど精巧な機械がない」との返答でした。

まず単純に、「蒸した米を均一に広げる」というニッチなタクスを行う機械が存在しないらしいです。米を潰さず、かといってまとまりすぎないようにきちんと広げる機械なんて確かになさそうです。

人間が自身の感覚器を(無意識に)使って達成している、「潰れるからやさしめに握る」みたいなタクスはそもそも機械に模倣させるのが難しい上に、それが「蒸された米」だなんてさらに難易度超高いでしょう、たぶん。

仮にそういった機械があったとしても、もっと面倒な問題は、「炊きあがりの度に水分量が異なる米にどう対応するか」です。

比較的水分量が高く粘度の高い米がある一方で、そうではない米があったりして、それらをリアルタイムにセンシングしながら、”ここの米は水分量多いから水分が飛びやすいようにちょっと深めに米を広げよう” とか、”ここはちょっと水分量低いから、水分量高い米と一緒においとこう” みたいな機微を機械ではいい感じに再現できない、とのことでした。

『作業自体は超単純(米を均一に台に広げる)なのに、実は膨大なパラメータを知覚して働きかけ、そのフィードパックをリアルタイムに得て環境に対して逐次いい感じに処理する』という、まさに人間には難なくできるけど機械再現は難しいという類の問題の話っぽいです。

ただ、これからの日本社会が深層学習で動くA.I.的なものを使って人間作業を機械に置き換えて生産性をあげようとした時に、この日本酒作りのように、「作業が繊細過ぎる・複雑過ぎる・人間の感覚器レベルのセンサーが必要」という、ソフトウェアよりハードウェア性能がボトルネックになり機械再現難易度が高いという話がたくさん出てきそうな気がします。

ハードウェアの問題とソフトウェアの問題をごっちゃにして、「A.I.をもってしても職人技は再現できない」みたいな話になりそうで、A.I.ブームがまた冬の時期を迎えないか心配です。(もしくは、再現できるとしても途方もない開発費が必要になる。「それなら人間がやった方が早いし安い問題」になる)。

そう考えると、人間の作業者に払っているお給料って、人間が持つハードウェア性能を考えれば、安んですよね。たぶん。

 

その他もろもろ

Q. 獺祭って、データを活用した酒造り手法でもすごく話題になってるみたいなんですが、中で働かれている方も、「ここがすごい」と思うことって何かありますか?
A. 正直なところ、他の酒蔵がどうしているか知らないので、自分たちがやっていることがノーマルなことなのか凄いことなのかもわからない
Q. 別の酒蔵から転職してきた人や、転職していった人もいる?
A. 酒蔵は基本的に、別の蔵に移るということはめったにない。ずっと同じ蔵で仕事をする。だから他の蔵のやり方なども知らない
Q. ちなみに、あなた(蔵案内してくれた社員さん)はずっとここで働かれているのですか?
A. 前職は東京でワインソムリエをしていました
(!!?)

Q. 旭酒造は今後何を目指すんですか?もっと高値の商品を開発する?海外展開をもっと頑張る?
A. 現状維持ですね。
Q. 現状維持…?
A. そもそも日本酒消費は右肩下がり。消費をあげることよりも、「下げない」ことのほうが難しいし重要なのです。

(この後も延々お話を聞いていたのですが、忘れてしまいました。。。)

 

お土産コーナー(直売所)

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旭酒造のビルのすぐ目の前には旭酒造製品の直売所もありました。外観もすごくオシャレ。というか、旭酒造の商品は全部オシャレ。

店内はそこまで広くないですが、20人ほどの人でいっぱいになっていました。

直売所なので何が限定商品売っているかと思いきや、並んでいるものは東京でも買えるものばかりとのこと(ちょっとがっかり。)

そんななかで面白かったのは、“自主回収品”の獺祭が半額で売られていたことです。2016年の年末に自主回収していて、朝日新聞のネット記事にも出てたんですね。

上の記事の通り、「虫が混入していた」というクレームを受けて自主回収したそうなんですが、実はその後、きちんと調査して保健所にも第三者機関にも調べてもらって、混入がその一本だけだったことを確認したので、回収品は通常なら廃棄処分しますがフードロスの観点から販売します、その代わり半額で売ります、ということを直売店でやっていたみたいです。

店員の人が出てきて口頭説明もきちんとしたところ、お客さんは文句一つ言わず、むしろ喜々として半額の獺祭をまとめ買いしガンガン売れてました(自分も一本買いました。)。

獺祭 磨き三割九分 720mlが1000円ちょっとで売ってますからね。とりあえず買うよね。なんだか「フードロス」について考えさせられる光景でした。

その他には、ただのミーハー根性で「獺祭石鹸」と「獺祭煎餅」と「獺祭シフォンケーキ」をお土産として買いました。

個人的なお気に入りは「獺祭アイス」です。めっちゃうまいです。お店で見かけた際は是非トライしてみてください!

あと、直売所限定商品はなかったのですが、山口県内の料理屋などでは、県内限定流通らしい “酵母が生きてる生搾り” の獺祭などがありました。運転手で飲めなかったのですが、またいつか飲んでみたい…!

 

後日談

山口から帰ってきて、これまでに書いたような内容を会社の人と雑談していたときに、「こういう自動化やデータによる酒造を極めていくと、そのうち大手メーカの全自動酒造工場と区別できなくなったりしないのかな?」という話になりました。

たしかにこのままいくと、機械化とか効率化ノウハウはきっと大手メーカと同じく収束されていきそうな気がします。そして製造工程が収束されていくなら、味も同じようなものに落ち着きそう。

「たしかに…」と思い、例として「月桂冠」をちょっと調べてみると月桂冠株式会社も全自動工場作って一年中日本酒作りしているそうです(そりゃそうだ)。

こちらのブログによると、一升瓶1000万本製造する月桂冠の大工場には11人しか作業者がいないらしいです。きっとここにも「杜氏」と呼ばれる人はいないし、さらにもっと作業が自動化されている… そもそも一年中製造してるのって旭酒造だけという話では…?とこの時点で思いましたが、おそらく自分が知らない業界の区別や、ポジショントークなどが含まれているのでしょう。詳しい人いたらおしえてください。

そして、旭酒造がこの先も成長し続けて大企業になると「獺祭」の味が落ちるのでは? 他の大手メーカーと何が差分になるのか? という話はちょうど最近公開された東洋経済の記事に回答っぽいものが載っていました。

>建物のスケールと生産量は大きくなったけれど、一つひとつの仕込みのスケールは変えていません。
>獺祭の場合は、本蔵が大きくなり、生産量も増えましたが、仕込み用のタンクは3000リットルと5000リットルという地酒業界でも小さい部類のタンクを使っています。実は、これだけの量の酒の味と質を、社員たちがコントロールしているところにわれわれの強みがあるのです。

「洗米」のところで聞いてきたとおり、「少量をきっちり仕上げる」というスタンスを崩さないから獺祭は美味しいし、これから生産量をあげていく中でもそれを続ける、というのが回答のようです。ここまでくると、「大量生産した獺祭」と「少量できっちり仕上げた獺祭」がどれほど味に違いがでるのか知りたい欲が出てきますね…

旭酒造の凄さは、大企業傘下ではない会社が地方から、しかも1代で、斜陽産業である日本酒領域でここまで日本中に名が知られる製品を作ったことだなぁと改めて思います。あと個人的には、IT農業のakisaiがかっこよすぎます。そちらも見てみたいなぁ。

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