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“ニコニコ学会β”の凄さ、ニコニコ動画は最強のコミュニティーデザイナーになり得るか?

2013/05/04 ysdyt 3 Comments

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昨日の深夜に誤ってむしむし生放送を見たばっかりに、誘惑に負けて2日目の”ニコニコ学会β“に行ってきてしまった。(ニコニコのアカウント持ってて、まだ見てない人にはすごくオススメ!動画はバッタ博士のトーク部分から始まります。一撃でファンになりました本も買いました。)

会場は幕張メッセ。途中の駅にはディズニーに行く人達とニコニコに行く人達でバッツリ層が分かれていたように見えた。

とりあえず恐ろしい来場者数で、当日券は10分ほどでゲット出来たにも関わらず、会場に入るまでに1時間近く並んだ。(会場入口であまり意味のない手荷物検査をしていたため。)

意外だったのは女の人が多いこと。もっとオタクの男まみれかと思いきや中学生〜20真ん中くらいの若い女の人(カップル)がすごく多い。

そして会場に入ってみると、この良く訓練されたニコニココミュニティーたるや、年齢層も性別も展示コンテンツも完全カオスなのにもう本当に”全員”がめっちゃ楽しそう。

 

会場一部ブースではガチで研究発表してるし、

AIと人間が将棋してるし大盤解説までしてるし、

FabLabでは3Dプリンター動いてるし、なんか作ってるし(初めて実物を見たのでテンション上がった!)

実物しない歌手(初音ミク)にサイリウム振って踊り狂ってるし、

セグウェイで爆走してるし、(乗りたかったけど長蛇の列で断念した。)


ドアラは牧場の柵に閉じ込められてるし、

キャラグッズ売ってるし、女装してる男のコスプレイヤーうじゃうじゃいるし、

100人以上で一斉に踊りだすし、全自動のレゴがボールを運搬し続けてるし、

空中にはアノマロカリスみたいなの飛んでるし、

アニキって呼ばれる外人がマイクパフォーマンスしてるし、(知らない人なので興奮を共有できない)

その隣で完全スルーよろしくハンダゴテでなんか溶接してるし、

自衛隊がすごく丁寧にビラ配ってるし、本物の戦車も痛車もなんでもござれ

菅直人と石破茂が政党演説してるし、

ペットボトルの蓋で綾波作るためにローソン店員が声を張り上げて廃ペットボトルの回収してるし、エヴァ初号機が落書きだらけで鎮座されてて….

まさにカオス。。。!

結局ニコニコ学会ってなにやってたの?と聞かれると、「文化祭のようなDIY工房のようなアカデミックな場のような…とにかくなんでも!!!」というかんじ。とても説明できない謎の世界感。著名な学者先生方はもっとこのヤバい現象を研究したほうがいいと切実に思う。。。

ともあれ、めちゃくちゃたのしかった。ニコ厨じゃなくても朝から晩まで楽しめると思う。

しかしこの数年はほとんどログインすらしていなかったニコニコだけに、みんなが熱狂する有名な歌い手や、「踊ってみた」のネットアイドルが全然わからない。なのでちょっと引いた位置から会場をボーっと見渡していて素朴な疑問が浮かんだ。
「なぜニコニコ動画はここまで愛されるのか?」

 

SFCの大学院ではバイオの授業そっちのけでコミュニティー論とかまちづくり論とかの授業をとっているのだけれど、SFCの”まちづくり論”は「ITで人の繋がりをつくるには?」というのがひとつのメインテーマになっている。

その分野では「すべての人が主体的に関わり合う”ユーザー参加型”のシステム」というのがお決まりのフレーズとして必ず登場する。
というより「ソーシャル」とか「デザイン」という単語が流行って以降、来場者・運営側・スピーカー・著名人・一般人全部関係無く「全員が聴者で、かつ話者である」というスタンスや、全員が参加するワークショップ形式がイベントのスタンダードになってきている。これはおそらくどこの分野でもそうなってきている。誰が議決権を持つともなく、双方向で意見を出し合うフューチャーセンター形式のワークショップが流行りだしているように、「これはあなたと私、そしてここにいるみんなで作る◯◯です!」みたいなスタンスのイベントやwebサービスが増えている。

それが良いか悪いかは別にして、web上で展開されている種々のサービス、e-learingサービスやオンラインコミュニティーサイト、生産者と消費者を結びつけるクラウドファウンディング系サービスはこのニコニコ動画が実現している”ユーザー参加型コミュニティー”の形成方法論から参考にできるところがたくさんありそうな気がする。

ニコニコ動画のようなCGM(消費者生成メディア)の世界では以下のような傾向が一般に知られている。

よく言われている「良いクリエイターがいて、良いコンテンツがあれば人は集まる」というのは、実は数字的に見ると正しくありません。「視聴者がいるところにクリエイターが増える」のです。「おもしろい」と言われているところには、視聴者がいる場所なんです。そして、そこに良いクリエイターが集まって、良いコンテンツが生まれるわけです。(『進化するアカデミア- 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』)

 

リアルの世界でも、新規にコミュニティーやイベントを作るためにはよく「憧れるようなカリスマ的なリーダー」や「最先端のスキルを持った人」のような目玉となるような人が参加していないと人を集めることができない、というような話をよく聞くけど、それは後から着いてくるもので、先に人が集まる場所が存在しなくてはいけないというのがCGM的知見。また、人がたくさん集まる場所というのは「コミュニケーションが最適化された場所」であると主張されている。
「コミュニケーションが最適化された場所」とは、「発表したい人」と「それを聞きたい人」が無駄な労力無く出会える場所であり、自分の意見が容易に発信でき、(そして個人的に一番重要じゃないかと思っている)「他人の意見や気分を”リアルタイムで”共有できる」場所のこと。

ニコニコ動画ではこの環境をweb上で実現するために「動画上に流れるコメント機能」を実装している。(こんなかんじ↓)

この機能は動画を見ている人の時間軸に影響せず、まるで動画を一緒に見ているようなリアルタイムな臨場感を与えるため”擬似同期性コメント”と呼ばれる。ニコニコ動画が莫大なユーザーを集められたのは、このアーキテクチャーとしての工夫が大いに貢献していると思う。

 

まとめると、
web上で圧倒的なユーザー数と、リアルな世界での活発的なコミュニティー活動とその文化の創造に成功したニコニコ動画から、リアル世界の”まちづくり活動/地域活性化活動” やweb上の”ソーシャルな”機能をアピールするサービスが参考にできることは、

コンテンツの面白さももちろんであるが、ユーザー(住民)コミュニケーション(個人の意見や気分をリアルタイムに共有できる仕組み)をより深化させるようなアーキテクチャーとしての工夫が大切

ということだろうか。

一発限りの豪華ゲストや目玉企画を用意するよりも、上記の「コミュニケーションが最適化された場所」を胸を張って実現できていると言える方が人が集まる良いコミュニティーを作れるのかもしれない。なんだか最近目にするものは「ユーザー主体のソーシャルなイベント!」と銘打っている割にはコンテンツの面白さのみを全面に打ち出した、「テンションがあがったこの熱いおれの気持ちをみんなと共有したい!!!」というニーズを満たす工夫が無い(もしくは安易に捉えている)イベントが多い気がする。
サッカーやライブを観戦してるときのあのテンションハイな状態を知らない誰かと共有している臨場感をweb上や ちょっとかしこまったディスカッションの場にもアーキテクチャーとして組み込めるとすごく参加者が増える気がする。
 

 

それにしても、自分がニコニコ動画のアカウントを取ったのは大学1年生、5年くらい前で、その頃には「違法アップロードを助長して著作権を踏みにじる、2ちゃんねるに並ぶ害悪サイト」みたいな言われ方をしてたのに、今日の盛況ぶりを見たら関係者でも無いのにジーンとしてしまった。。。会場でゲストとして登場するスピーカーの人達はかなりのvipなのに、そんなマスで上り詰めた人たちが自分たち側にわりと躊躇いなく寄ってきてくれる距離感を作った文化がスゴい。

「ニコニコ動画なんてサブカルチャーの何がスゴイんだ!?」という人は”ニコニコ動画が未来をつくる ドワンゴ物語“とか”アーキテクチャの生態系―情報環境はいかに設計されてきたか“とかぜひ読んでほしい。如何にユーザーのコンテンツ投稿の敷居を下げさせ、コミュニケーションを取りやすくし、かつ収益をあげるかという技術面をそこまで考えてやってたのかと感心するとお思う。(動画上に流れるコメントが可能にするコミュニケーションや、ひとつの動画を派生させて作る”N次創作”コミュニケーション文化など。)コミュニティー形成に欠かせない「情熱的な人」「ネジが外れたマニアックな人」、そしてそんな人たちに集まる「ファンの人たち」を集める仕組みが作りこまれている。
ここまでの盛り上がりを見せられると、圧倒的に先見性のあったフィクサーがこういう方向に進むように仕組んだのではないかと疑いたくなる。

ニコニコ動画の熱狂的なコミュニティー現象を「お金のない馬鹿な若者のサブカル趣味」としか捉えていないと何か非常に重要な、オモシロい現象を逃しそうな気がする…この界隈の話をもう少し注意して見ていこうと思ったのでした。

 

P.S
ニコニコ学会βの来場者数はこんな感じだったらしいです。噂のコミケのすごさを思い知った…

2014年もぜひ参加しよう、というか何かしら発表したい側に回りたいな。お祭りは企画する側のほうがきっと楽しい。

(最後に)
またまた表紙はこんなん↓ですが、中身は非常に興味深い。かつて「学会」を円滑化する仕組みから派生した”web”だけど、今度は学会がwebによって進化する必要がある時代になってきているのではないかという話。(webやHTMLの原型はもともと、発表された学術論文を効率的にシェアされる目的で開発された)

 

 

 

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