ysdyt.net

Aiming at the boundary between digital and analog

地方をIT化すると高齢者は本当に困るのか?

2013/09/12 ysdyt 1 Comment

Pocket

地方活性化の一つの流れとして、地域ICT化(IT化と同義)がある。行政サービスや日常生活・エンターテイメント・教育などさまざまな部分をどんどんオンライン上にあげていき、これまで人が介していたところを自動化することで地域の働き手不足を緩和したり、より円滑なコミュニケーションを実現しようという感じ。

いろんなことが効率化・簡略化するため、若い世代にはメリットがかなり大きいが、問題は「パソコンに触れない高齢者」である。

これまで個人的にも、「どうすればお年寄りがパソコンに触れるようになるか、ネットにアクセスできるようになるか」をいろいろ考えてみたけど、良い案は見つからない。そして高齢者向け簡易ネットアクセスデバイスなどの開発を頑張っている企業もほとんど目につかない。
少し話は脱線し、そしてこれは完全に妄想なのだけれど、この問題については企業も諦めているのではないかと思う。現在において、パソコンを操り、問題なくwebにアクセスできる最高の年齢層は50代後半くらいかなと思うのだけれど、その人達もあと10年20年で「高齢者」と呼ばれる。つまり、あと10年20年すれば現在の「パソコンが使えない高齢者」はほぼ亡くなり、すべての年齢層でパソコン利用が前提の社会システムを作れるようになる。この10年20年のために、企業が新たな高齢者向けネットアクセスデバイスを企画・製造・販売、そして黒字化することは素人ながらにも実現が難しいことがわかる。企業はそんなことをせず、「10年20年待とう」という状態になっているのではないかと妄想している。(世界の高齢化国をビジネス対象にするなら話は別だが。)

 

話は変わるが、今月号のwiredのエストニアの記事が目に入った。

エストニアは、他国が羨むような「オープンガバメント」のモデルを既に実現しており、日本の10年20年先を行くような社会システムが出来上がっている。選挙、会社登記、税申告など行政関連業務および市民生活の多くをオンラインで執り行うことができる。
具体的には、15歳以上のエストニア国民全てに電子IDカードを交付し、それが身分証明書・運転免許書・健康保険証として機能し、納税・会社登記・処方箋発行もカード一枚で完結することができる。
その他、世界初の本物の「ネット選挙」を行い、オンライン税金申告は国民の95%が活用しているらしい。これによって、年間ですべての納税者がかける約27万時間の納税手続き時間の短縮、また約7万5000時間の税務署員勤務時間の短縮など数字として効果を上げているからスゴい。保健医療分野においても、自分の病歴や通院履歴などはすべて患者単位でポータルサイトに一元管理され、94%の処方箋がデジタル発行されるなど医療の効率化にも抜かりがない。これらを実現する仕組みとして、電子改ざんや個人情報流出を防ぐセキュリティーの堅牢さや、システムの透明性を担保する仕組みなども先進的で非常に興味深い。この他にも、閣議や教育、警察の業務にも見事なまでのシステムが導入されている。詳しくは wired 9月号 オープンガバメント特集 を参照してほしい。

で、これを読んでいてエストニアの超先進的な社会システムに感動したわけなのだけど、「これってお年寄りは使えてんの?」という疑問が浮かんだ。

特に、国民の95%に活用されているという納税のシステムやネット選挙、電子処方箋なんかもちゃんと使えているのかしら、と。本書には紹介されていなくてもおそらく他にもかなりIT化された部分があると思われるが、島根のおじいちゃん・おばあちゃんが同じ境遇になったとすると右往左往する様子が目に浮かぶ。

ここまで思って、
「あれ?もしかしてエストニアって高齢者がほとんどいないのでは?」と思い、ちょっとググって日本と比較してみた。

日本人口             127,817,277人 (2011)
エストニア人口        1,294,455人 (2011, 参照)

エストニアの人口は日本の約100分の1らしい

そういえばエストニアってここです。ヨーロッパ

面積は45,227 km2 。日本の約8分の1 (面積が1/8なのに人口が1/100なんで人口密度はかなり小さい)

そして、年齢別人口分布を見てみると、
日本では

  • 0-14歳    13.7%
  • 15-64歳    63.7%
  • 65歳以上     23.3%
    (2011, 統計局の 年齢(5歳階級),男女別人口及び割合-総人口(各年10月1日現在)を参照 ) 

エストニアでは

  • 0-14歳    15.3%
  • 15-64歳    66.8%
  • 65歳以上     18.0%
    (2012, Estonia Age Structure を参照) 

思ったより日本の年齢別人口分布と近い…? 65歳以上の 23.3%と18.0%というのは近いと言っていいのか?試しに他の国の65歳以上人口割合を見てみると、

  • 日本                23.3%
  • アメリカ          13.1%
  • カナダ             14.1%
  • イギリス          16.1%
  • ドイツ             20.4%
  • フランス          16.8%
  • イタリア          20.4%
  • 中国                  8.9%
  • インド               4.9%
  • 韓国                11.1%
  • オーストラリア 13.4%
    (2011, 世界の65歳以上人口 を参照)

アジアの国では日本だけが飛び抜けて高齢化しているが、その他の国はそれほど。しかし、ヨーロッパ諸国では日本並みに高くなっている印象。エストニアも日本並みに高齢化していると言っても間違いはなさそう。

ならばなおさら、「お年寄りはIT化に困っているのではないの?」という話なのだけれど、実際はどうなんでしょう。本書を読む限り、確かに2005年から導入されたネット選挙の国民利用率は約25%に留まっているらしい。高齢者は投票場に出向いて紙で投票しているのかもしれない。また、利用率95%のオンライン税金申請においても、納税申請の繁忙期でもリアル窓口は閑散としているとのこと。オンラインがよくわからない高齢者はガラガラの窓口を利用しているのかもしれない。

実際の高齢者の対応はわからないけれど、(これ以上まだきちんと調べられていないけれど、)日本と似たような高齢化率の国で、かなりのIT化が行われながらもきちんと回っているという現実は面白い。初めて高齢者とITとの関係に対するポジティブな話を聞いた気がする。「高齢者が困るからIT化が進まない」と言うけれど、きちんと工夫してやってみたら意外にうまくいくのかも?

Pocket

Previous Post

Next Post